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Preston Love – Preston Love's Omaha Bar-B-Q (1970)

 サクソフォン奏者Preston Loveは40年代にCount Basie Orchestraに参加して以来、Johnny OtisやRay Charles、さらにはモータウンのLA支部など、オマハや西海岸を中心としたジャズ・シーンをそのファンキーな才能で彩ってきた。そんなLoveが1968年に録音した傑作『Omaha Bar-B-Q』は、彼が渡り歩いてきた様々なオーケストラの音楽的要素が詰め込まれているようだ。1曲目の「Chicken Gumbo」に挟まれたコール・アンド・レスポンスなどは、Charlesの名曲「What'd I Say」のやりとりが否応なく思い出される。
 「Omaha Bar-B-Que」は彼の地元に捧げられた熱いジャズで、スローなブルース「Hot Cakes And Sorghum」と並んで黒人のソウル・フードをテーマにした、非常に親しみやすいナンバーである。一方で、James Brown を思わせる「Chili Mac」のような重厚なファンクも印象的だ。Loveのサックスと同じか、あるいはそれ以上に存在感を放っているのは、ピアノのJohnny Otisとともに特別参加した若き天才Shuggie Otisのギターで、当時彼は10代半ばであった。「Shuggie's Chittlin' Blues」は名前の通り彼を主役に据えた堂々たるブルースだが、そのサウンドには同世代のロック・ギタリスト(特にMike Bloomfieldのような)たちの強い影響が聴いてとれる。
 だがアルバムを締めくくるのは、どっしりとしたグルーヴと天を衝くようなLoveのアルト・ソロの冴えが見事な対比を生む「Pot Likker」だ。Loveのリーダー作は数こそ少ないが、本作は名門レーベルのケントから発売されたこともあいまって、ジャズだけでなくソウル・ファンにも愛される一枚である。