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Rodney Franklin – You'll Never Know (1980)

 弱冠21歳のRodney Franklinは、フロアに強く訴えかけるジャズ・ファンクを生み出したことで、クラブ・シーンから尊敬を集める存在となった。だが、彼はポスト・バップの影響を隠さないリリカルなピアニストであり、デビュー作ではByron Olsonによる流麗なモダン・クラシックの組曲に挑戦したこともあった。
 これらは全て真実だ。「The Groove」のクロスオーバー・ヒット(アメリカ国内のダンスとR&Bチャートにそれぞれランクインした)は彼の才能に後から付いてきたデータに過ぎない。実際、本作の中には、彼の豊かで独創的な音楽のエッセンスが詰め込まれていて、これが一枚のアルバムだと思えないほどである。
 重厚なフュージョンの「Felix Leo」ではRay Pizziのバス・クラリネットが絶妙なアクセントとして効いている。「Journey」はそうした緊密なアンサンブルに対をなすかのように繰り広げられる内省的なピアノの独演だが、こういった美しい曲が彼のベスト盤に収録されていないのは嘆かわしい話だ。「The Groove」はとびきりのダンス・クラシックで、タイトなビートの上で軽やかに切り込むFranklinのタッチは何度聴いてもぞくぞくさせられる。Phyllis St. Jamesをフィーチャーした「Parkay Man」はやや単調なディスコ・ファンクに収まっているが、タイトル・トラックでのFranklinとのデュエットは見事だ。そしてふたたびピアノのテクニックに圧倒される「Return」。
 一人のミュージシャンの才能がここまで贅沢に詰め込まれたアルバムが生まれたのはなによりも素晴らしいことだ。80年代の幕開けにはピッタリの名盤である。