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Lightnin' Hopkins – Free Form Patterns (1968)

 『Free Form Patterns』は、Lightnin' Hopkinsの地元であるテキサスのスタジオにて、良きパートナーであり親戚でもあるハーピストBilly Bizorとともに録音したアルバムだ。しかし、本作が彼のキャリアの中でも異色作として知られている理由は、サイケデリックなジャケットの見た目だけではない。60年代ロックのファンを魅了してやまないインターナショナル・アーティスツ・レーベルから出た数少ない〈純粋な〉ブルース作品であり、13th Floor Elevatorsの参加メンバーであったベーシストDuke DavisとドラマーのDanny Thomasとの共演盤でもあるからだ。
 だが騙されてはいけない。いざ中身を聴いてみるとHopkins自身は至って自然体そのものである。Sonny TerryとBrownie McGheeによる決定版的な演奏が有名な「Fox Chase」は、Bizorの豪快なハープが光る。「Cooking's Done」は聴きなれないタイトルかもしれないが、イントロのギターと「I'm goin' To Louisiana」という歌いだしを聴けば誰もが名曲「Mojo Hand」の変化形だとわかるはずだ。DavisとThomasはロックミュージシャンとしての勢いは出しつつも、偉大なブルースマンのサポートに徹している。レーベルの特色やアルバムのビジュアルを裏切ってはいるが、このリスペクトに満ちた決断は賞賛されて然るべきだろう。
 また、オリジナル盤は1枚のLPに収まっているが、本作のアーカイブ的な真価はCD3枚組にもおよんだ膨大なレコーディング風景の記録にある。プロデューサーLelan Rogers(Kenny Rogersの兄でもある)やエンジニアたちの好奇心によって録音中ずっとテープを回転させ続けていたため、合間々々に交わされたHopkinsたちの会話や、ミステイクに至るまでが全て後世に残された。