The Sonics – This Is The Sonics (2015)
これは〈Pat Booneがヘヴィメタルを歌ってしまった〉とか、〈保守的な聖歌隊の老人が一時の気の迷いでロックンロールに挑戦した〉という類いの話ではない。正真正銘、60年代ガレージバンドThe Sonicsが発表したオリジナル・アルバムだ。
1965年にガレージロックの金字塔『Here Are The Sonics!!!』を生み出しUSロックの伝説となったThe Sonicsだが、それから長い時を経て2015年に齢70代のガレージバンドとして彼らは再び伝説を打ち立ててみせた。何よりもファンを驚かせたのは、Gerry Roslieのがなり声や、Larry Parypaの狂わんばかりのギター、そしてRob Lindのサイレンのようにけたたましいサックスが相も変わらず健在であることだった。あまり目立った活動をしてこなかった彼らだったが、『This Is The Sonics』リリース後に行われたライブ・アルバムでも驚異的なパフォーマンスを見せている。
「I Don't Need No Doctor」はRay Charlesが60年代にヒットさせたR&Bで、「You Can't Judge A Book By The Cover」はR&Rの父Bo Diddleyによるスタンダードだ。年を重ねた円熟味より、一直線の轟音で勝負していく様はガレージ・ロックの美学や痛快さすら感じさせる。The Sonicsは伝統に倣い、これらの名曲をクラシックな演奏・録音方法でレコードに閉じ込めた。70代にして、この破壊的なまでの偉業を成し遂げたという点において、本作は間違いなく革新的なアルバムとも言えるだろう。