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Leonard Cohen – Songs Of Love And Hate (1971)

 小説家兼詩人として成功していたLeonard Cohenの歌手デビューは1960年代の半ばに評論家やリスナーから喝采をもって受け入れられ、3枚目のLPである『Songs Of Love And Hate』でCohenは自身の歌とサウンドの面でさらなる個性を確立した。本作のタイトルは今までのCohenのアルバムのそれと同じくらい端的だが、一筋縄ではいかない一枚でもある。とはいえCohenが意味深でない歌を歌ったことなどなかったのだが。
 苦しみに満ちた「Avalanche」では、北風のように冷たいギターの音色と暗いストリングスがCohenの歌を強調し、妻の浮気相手に送る手紙の形式で綴られた「Famous Blue Raincoat」は、シンプルでありながら作品中で最もドラマティックな一曲だ。「Diamonds In The Mine」での彼の歌声は今までになくエモーショナルで仰々しく、James Taylorの「Steamroller Blues」のカントリー版といった趣きだ。スティール・ギターをフィーチャーした音楽はポップに仕上がっているが、これは一見するとアルバムのタイトルにそぐわない歌のようにも思える。
 共にジャンヌ・ダルクに材を採った「Last Year's Man」と「Joan Of Arc」では異なる性質のバック・コーラスを巧みに使い分けている。「Sing Another Song, Boys」は本作で唯一、ワイト島の音楽フェスに出演した時のライブ音源が収められた。プロデューサーBob JohnstonやCharlie Danielsを擁したバンドの演奏は豪華でありながらほどよく抑制されており、後半の合唱は神々しいまでのカタルシスがあふれていて納得のテイクといえる。