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Nirvana – Nevermind (1991)

 確かにNirvanaのギタリストKurt Cobainの命を直接奪ったのはレミントン11モデルのショットガンだが、間接的なものを挙げるとするならば、うつ病、薬物、そして本作に収録された歴史的名曲「Smells Like Teen Spirit」など、枚挙に暇はない。〈Pixiesを真似たんだ〉という言葉のとおり、Cobainはあくまでもシニカルとアイロニックに徹して本作を作り上げたつもりだったのだが、『Nevermind』は地元シアトルの枠を越えて全米はおろか世界的なヒットを果たす傑作となった。
 本作では「Come As You Are」の矛盾を抱えた歌詞や、どす黒い犯罪を描いた「Polly」のような楽曲が、「Breed」や「Lithium」のようなヘヴィなポップ・サウンドと同居している。90年代のオルタナティブ・ロックが進む道を示すような音のストレートさと、皮肉めいたジャケットにも表れているドライな歌詞は、80年代のように明るく生きることのできなかった多くのティーンエイジャーの心を掴んだ。
 メロディ自体は多くのリスナーが指摘する通り、オールド・ロックの焼き直しの要素を含んでいる。しかし、ドラムのDave GrohlとベースのKrist Novoselicの生みだす、メタルともハード・ロックともつかないラウドなグルーヴと、パンクの土壌から生まれるCobainのギター・サウンドは、新たに定義されつつあったグランジというジャンルの地位を確固たるものにした。『Nevermind』の成功にうんざりしきったNirvanaは、Steve Albiniをプロデューサーに迎えて次作『In Utero』で原点回帰を図ることになる。賛否両論とはいえ賛辞の方が強かったアルバム『In Utero』だったが、結局はそれもCobainの心を癒すには至らなかった。