見出し画像

John Blues Boyd – What My Eyes Have Seen (2019)

 幼少よりコットン・フィールドで働き、激動の時代を生き抜いたJohn Blues Boydが本格的にブルース歌手としてのキャリアをスタートさせたのは、驚くことにごく最近の出来事である。偉大なブルースマンであるEddie Boydのいとことしても知られている彼の記憶の集大成ともいうべき『What My Eyes Have Seen』は、彼がアメリカのブルーカラーとして人生を歩んできたからこそ痛烈に響く言葉にあふれている。
 「Run Out Of Town」は若き日の彼を偽りなくさらけ出している。自由を求め公民権運動に参加し、故郷を追われ、カリフォルニアで愛する人のために生きた彼の半生を歌った。「A Beautiful Woman (For Dona Mae)」はBoydの亡くなった妻に捧げられた美しいブルースだ。
 「California」や「49 Years」は彼の古き良き時代を歌ったアップ・テンポなジャンプ・ブルースである。粋なギターを聴かせるKid Andersenは、Charlie MusselwhiteやElvin Bishopの下で経験を積んだプレイヤーで、本作のライティング方面でも関わっている。
 ブルース・ギタリストMike Zitoによって設立されたガルフ・コースト・レーベルからリリースされたこの驚くべきコンセプト・アルバムは、単なるお堅い社会派ブルースではない。一人の黒人の放つ等身大の証言であり、アメリカの伝記だ。合衆国が揺れに揺れているこの時代だからこそ、ジャケットのサングラスに映りこんだ〈アメリカの歴史〉を今一度振り返る必要があるだろう。