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Bill Evans Trio – Sunday At The Village Vanguard (1961)

 史上最も影響力のあるピアニストの一人であるBill Evansは、自身の洗練された演奏はもちろんのこと、ベースとドラムとの対等な調和関係から生まれるインタープレイの概念を確立したことで、ジャズにおけるトリオ・スタイルそのものにまで大きな革新をもたらした。音の余韻や演者同士の間、静謐さの中で生まれる確かな熱量。それらがメンバーの間で進行形で刻まれていく独特の感覚は、本作のようなライブ・アルバムでより深く味わうことができる。
 Miles Davisのバンドから独立した後、ベースのScott LaFaroとドラムのPaul Motianとともにトリオを結成したEvansは、モーダル・ジャズの傑作アルバム『Portrait In Jazz』を発表する。それから61年6月のヴィレッジ・ヴァンガード出演までは約1年半の間隔があるが、その間に3人の音楽的な関係はより強固なものとなっていた。「Gloria's Step」の後半部でのLaFaroは、単なるリズム隊としてのベーシストという地位からは完全に脱却しており、Davisが50年代に録音した「Solar」は、優雅でありながら原曲のスイング感をまったく損なっていない。美しいEvansのイントロに始まり、そこから力強い三つ巴のプレイへ流れていく「Alice In Wonderland」(ディズニー映画の名曲だ)などは、何度聴いてもわくわくせずにはいられない。
 クラブ・オーナーのMax Gordonによれば、無名時代のEvansがヴィレッジ・ヴァンガードに初出演したころは、客の評判はイマイチだったという。同日録音の『Waltz For Debby』と並んで、本作がジャズ・ライブの定番として讃えられている現在では、これはいささか信じがたいエピソードだ。