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Jimmy Witherspoon – At The Monterey Jazz Festival (1959)

  カンザス・シティ直系の、というよりはJimmy Rushingのスタイルをまるでそのまま受け継いだかのように歌い上げるJimmy Witherspoonは、本作の時点で数多い名プレイヤーたちと共演をこなしてきた、いわゆるベテランの地位にいた。とはいえ、ジャズだとかブルースといったカテゴリにこだわりがちな音楽ファンは、彼やRushingのようにジャンルがあいまいな立ち位置にいる存在をどうも見落としがちである。実際、ダウン・ビート誌が1960年代に入ってからようやくWitherspoonに〈ベスト新人賞〉を与えた、などという笑うに笑えない話もある。
 59年のモンタレー・ジャズ祭のステージを収めた本作は、トータルの再生時間はわずか25分とコンパクトだが、Witherspoonの名調子と脇を固める名手たち、そして観客の声援が生み出す熱狂が最高の傑作である。おなじみの「Ain't Nobody's Business」は、WitherspoonのブルージーなシャウトにEarl Hinesの軽やかだが存在感のあるピアノがぴったりと寄りそっている。そして、時おり挟まるRoy Eldridgeのすすり泣きのようなトランペットは実に感情的で、聴く者の涙を誘う。ホーンにはアルト・サックスのWoody Hermanのほか、Ben WebsterとColeman Hawkinsの2人のテナーマンを擁しているが、このゴージャスな味わいは「When I Been Drinkin'」や「When I Been Drinkin'」のようなスロー・ナンバーに顕著だ。しかし、これだけの面々を相手にして全くびくともしないWitherspoonの歌唱にこそ、やはり本作の神髄がある。また、同年のブルース・アルバムでは軽快な仕上がりだった「Good Rockin' Tonight」も、本作ではスインギーさが少なくとも3割は増している。