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Funny Papa Smith – 1930-1931 The Original Howling Wolf (1972)

 泣く子も黙る〈Howling Wolf〉。オオカミというあだ名は今でこそシカゴ・ブルースの大御所Chester Burnettのことを指すが、こと戦前のテキサスにおいては、その名は洗練されたギター奏者J.T. Smithの異名にほかならなかった。Burnettは60年代のインタビューの中でSmithの「Howling Wolf Blues」をかねてから知っていたと言っているが、自身のステージ・ネームはSmithから拝借したものではなかったとも発言している。
 だがそれもそのはずで、Smithの卓越したギターやボーカルのスタイルはアクの強いBurnettのそれとはまったく異なり、30年代の録音とは思えないほどにあか抜けたものだった。「Howling Wolf Blues」は愛、無慈悲な神、悲哀に満ちた黒人の人生を描いた彼の代表作だ。ボーカリオン・レーベルからシングルで2度にわたって発表された名曲だが、レコードには"Funny Paper" Smithの名でクレジットされている。「Mama's Quittin' And Leaving」や「Tell It To The Judge」では女性ボーカルをフィーチャーしており、伸びやかで包容力のある歌声で展開されるデュエットが印象的である。パワフルなベース音が聴きものの「Hoppin' Toad Frog」は、軽やかなサウンドとは裏腹にこの上なくみじめなストーリーを伝えるブルースだ。
 最後に気を付けるべき点を一つ。Smithの写真は現存していない。ジャケットに使用されている写真は本人ではなくB.K. Turnerのものである。