McGuinness Flint – McGuinness Flint (1970)
真に上質なルーツ・ロック・バンドはブルース、カントリー、フォークの中庸を見事に突いたサウンドを生み出すことができる。イギリスのビート・シーンで活躍したTom McGuinnessと、The Bluesbreakersの要としてJohn Mayallを支えた名ドラマーHughie Flintの名を冠して生まれたMcGuinness Flintは、ルーツ回帰の良心とも言うべき実直な傑作を多く残している。
Help Yourselfが歌っていてもおかしくない「Lazy Afternoon」の穏やかな空気、そして「Let It Ride」のにぎやかなコーラスが彼らの真骨頂である。マンドリンやカズーの音色がなんとも暖かい「When I'm Dead And Gone」は英国2位のシングル・ヒットとなり、アルバムの成功の足掛かりにもなった。ロック・ジェネレイション特有のからりとした死生観だが、ブルースマンRobert Johnsonの逸話からの着想をにおわせる場面も存在している。他のバンドならば「Brother Psyche」のようなThe Beatles風のサイケデリック・ナンバーは10分以上に引き伸ばされるのが関の山だが、本作ではファンキーな「Who You Got To Love」に繋がっていく。
McGuinness Flintの(商業的な)成功はキャピトル時代に集約されているが、その実はBenny GallagherとGraham Lyleによる巧みなソング・ライティングに因るところが大きい。後にバンドから独立するこのコンビは、アメリカ音楽への実直なアプローチに絶妙なポップ・センスを添えており、これは同列のThe Bandとも異なる個性となって見事に確立している。