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Nick Drake – Five Leaves Left (1969)

 正当なレセプションを生前に受けることは無かったが、Nick Drakeは1974年の死までに『Five Leaves Left』、『Bryter Layter』、『Pink Moon』という素晴らしいアルバムを残している。そのいずれも底知れない繊細な美しさが満ちているのだが、興味深いのは彼を取り巻くサウンドやアレンジという点において、これら3枚は全く作風が異なっているということだ。
 69年発表の本作はDrakeの卓越したギターと落ち着きのある低い歌声を中心として、耳なじみのいいポップスと研ぎすまされたアコースティック・フォークの中庸に位置した一枚である。最も有名な「River Man」は、5/4という独特なテンポとスピリチュアルな歌詞でありながらもHarry Robertsonによるストリングスの効果でとても心地いい曲に仕上がっている。そして同時にどこかジャジーな雰囲気がただよう。
 ほとんどのアレンジはRobert Kirby(後にVashti Bunyanなどを手掛ける)が行っているが、Drakeの友人だったのをきっかけとして参加していた彼は、実は当時アマチュア同然の学生だった。だが「Way To Blue」の荘厳なサウンドには文句のつけようがないし、Drakeの意味深な厭世観に満ちた「Day Is Done」にフルートの音色を添えたセンスも素晴らしい。
 フォーク・ロック風の名曲「Time Has Told Me」にはDanny ThompsonとRichard Thompsonがゲストとして参加した。次作の『Bryter Layter』ではFairport Conventionのメンバーを交えたバンド・サウンドを展開するのだが、言うなればこの曲はその布石といったところである。