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NaraBara – Dab Hi (2024)

 歌詞の意味を理解していようがいまいが、NaraBaraが奏でる広大なスケールの音楽を耳にすれば、目の前に茫洋としたモンゴルの地平と宇宙が広がってくる。だが実際の彼らは、北京を拠点に活動するエレクトリック・ジャズのバンドである。
 エレキギターやシンセが活きたEP『Dab Hi』のコンセプトは、前作LP「Hamt Zamin H​ü​m​ü​s」はもちろんだが、シングルとしてリリースされた「Nara Nara Nara」の作風を特に汲んだものになっている。モンゴルの伝統的な早口言葉の歌詞やホーミーを取り入れた独特なボーカルを、ジャズ・ロックの引き締まったリズムに乗せた「Mirror Age」は、時間や空間といった感覚を軽く超越してみせる。本作から加入したFred Grenadeによるしなやかなベースも聴きどころで、NaraBaraの音楽の奥行きの深さを感じさせる一曲だ。
 一見して対照的な曲調の「Ghost Steps」や「Dab Hi」をとっても、それぞれの曲の中にYiderによる伝統楽器の威厳とSuotyのギターの鋭さが見事に同居している。歌の内容はというと、さまざまな動物がポンポンと飛び出すさまはさながらアジア版のマザーグースといった趣きだ。全編を通してスリリングな雰囲気が満ちているが、このEPのクライマックスである「Gobi Dance」にはそこに心地のいいシンセサイザーが加わり、思わず踊りだしたくなるような気安さが生まれている。