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Chris Farlowe – 14 Things To Think About (1966)

 Chris Farloweがソロ・シンガーとしてアルバム・デビューした60年代中期は、The Rolling Stonesをはじめとした英国のビート・バンドが手探りの中でオリジナルの音楽を生み出し始めていた時代だった。パワフルな14篇からなる『14 Things To Think About』の中にはJagger-Richards、Lennon-McCartneyらの初期の名曲が含まれている。FarloweはOtis ReddingやJames Carrを思わせるサザン・ソウル風のスタイルで見事に料理していく。
 「Lipstick Traces」のたたみかけるような言葉のリフレインや、悲痛な叫びが心に突き刺さる「Don't Play That Song」など、R&Bを基調としながらも曲のテイストは様々だ。Farloweのこの自在な歌声は、「Yesterday」さえしんみりとしたソウルに変えてしまう(ピアノの演奏も素晴らしい)。どの曲も彼の比類のない表現力の証明だ。
 Bob Dylanのナンバーである「It's All Over Now, Baby Blue」を、オーケストラで完璧に生まれ変わらせてしまったAndrew OldhamとArthur Greensladeのコンビの仕事も特筆に値する。Fats Dominoが録音したロックンロール「My Girl Josephine」は、カントリー風の疾走感が加わった超強力な一曲だ。
 70年代以降はAtomic RoosterやColosseumに参加し、英国プログレッシブ・ロックの最重要ボーカリストの一人になっていく。だが、どんなにスター・プレイヤーが集まった作品でもFarloweが存在感を失わなかったのは、彼が本作のようなソウルに根差した一本筋の通ったシンガーだからだ。