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Ramones – Ramones (1976)

 アルバム『Ramones』はそれにまつわる数字を並べるだけでも彼らの異質さが際立つ。本作のレコーディングにかけられた時間は、実質わずか7日間で、当時は10万ドル単位がザラだった製作費も、6,400ドルしか掛かっていない。そして生まれた14曲の歌はハイスピードかつストレートなものばかりで、LPの再生時間はElvis Presleyのファースト・アルバムよろしく30分にも満たない。しかし、本作がUSパンクの金字塔であることは紛れもない事実なのだ。
 冒頭を飾った「Blitzkrieg Bop」は、電撃戦法をモチーフにした高速のリフが印象的だ、というよりもこれに尽きるとしか言いようがない。ライブの定番曲でもあるが、年月を追うごとにそのスピードは増していき、Ramonesというバンドのスタンスにとどまらず、パンクの精神性そのものを象徴するアンセムとなる。
 4コードにこだわり、ギターソロさえもそぎ落としてしまったJohnny Ramoneの無駄のない音楽性もさることながら、曲に込められたメッセージも至極シンプルだ。ピュアで健全なるラブソング「I Wanna Be Your Boyfriend」や、少年にとっては最も身近なスリルであったシンナーを描く「Now I Wanna Sniff Some Glue」。いずれも3分にも満たない明快なサウンドだが、鬱屈とした少年たちの心をまるで突き刺すように駆け抜けていく。パンクには必ずしも政治的なメッセージは必要ない。なぜならアルバム『Ramones』ほど純粋なパンクはないからだ。
 それまではプログレの分野で知られていたサイアー・レーベルにとっても本作は記念碑的アルバムとなる。Ramonesの登場を皮切りに、ニューヨークのTalking Headsなど先進的なグループが次々と世に送り出されていった。