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Muddy Waters Blues Band feat. Dizzy Gillespie, 1977 (2001)

 年齢こそ60代半ばに差しかかっていたMuddy Watersだが、周囲の人間は彼が年々若返っているように見えたことだろう。健在を印象付けたThe Bandのコンサート映画『Last Waltz』への出演でさえ、Watersにとっては前菜にすぎず、Johnny Winterと組んで作ったアルバム『Hard Again』も大成功を収めた。さらに、それにまつわるツアーも含めたコンサートのため、Watersは毎年のように国内と海外を飛び回っていたのだ。
 そうしたさなかの77年、ニースで行われたジャズ・フェスティバルのステージを収録したのがこのCDで、セットリストには見慣れない曲も多いが、一度聴いてみれば馴染みのナンバーばかりだと分かるはずである。「Chicken Shack」のイントロで始まる「Nicest Blues」は、ニースのつづり〈NICE〉をもじったファンキー(リフは若い頃のBuddy Guyにそっくり)なインスト。Bob Margolinと"Guitar Junior" Johnsonを擁した若々しいギター・バトルの素晴らしさもさることながら、燃えたぎるシカゴらしさをアンサンブルにもたらしているのはJerry Portnoyのハープだ。「I've Got My Mojo Working」の熟練したPinetop Perkinsのピアノと、割れんばかりに響くワイルドなブロウの対比は何度聴いても鳥肌もので、Watersの歌にも思わず往年の勢いがみなぎっている。
 だが本作で特筆すべきは、なんといってもDizzy Gillespieとの共演だろう。「Honey Bee」(CDのリストには「So Long」というありえない誤記がされている)の冒頭における情熱的なスライドは、きっとWatersのものに違いない。この曲のラストからGillespieのトランペットが高らかに登場し、そこからジャンプ・ブルースの名作「Kansas City」の陽気なセッションへと流れていく。これは晩年のWatersの重要なレパートリーとなった歌で、当時はアフロ・ファンクに深く傾倒していたGillespieも、ここでは見事な王道のブルースを吹く。それに触発されたPerkinsのピアノはジャジーにカッコよく決まっている。なんともたまらない瞬間だ。