見出し画像

Shuggie Otis – Inspiration Information (1974)

 Shuggie Otisは、〈R&Bのゴッド・ファーザー〉と讃えられた父親Johnny Otisのもとで早くからミュージシャンとしての才能を開花させた。親離れも早かった彼は、二十歳にもならないうちに父の手から離れた環境で作品作りを始めるようになった。自宅の敷地内に立てられた8トラックのスタジオの中で、Shuggieは数年の時間をかけてほぼ自分だけの力で傑作『Inspiration Information』を完成させた。
 アルバムの幕開けを告げるタイトル・トラックは、恋の喜びを歌い上げているようだが、まるでShuggieがミューズとむつまじく戯れる哲学者のようにも思えてくるから不思議だ。こうしたレイド・バックした心地いいファンクはこのアルバムの大きな聴きどころで、一方「Island Letter」や「Aht Uh Mi Hed」などでは当時としては珍しいドラム・マシンが効果的に使われた。特に前者は美しいラテン・ナンバーとして完成している。
 「Happy House」は自身のヒット曲「Strawberry Letter 23」のきらびやかな雰囲気を思わせるサウンドが小気味よく、「XL-30」ではオルガンのサウンドに惜しみないエフェクトを加える好奇心を見せている。インストの「Not Available」はShuggieの軽やかなギター・カッティングが活きたプログレッシブなファンクだ。また、後年の再発盤には「Magic」をはじめとする初期のデモ・セッションが4曲収録されている。
 現在でこそファンクの金字塔と言われる一枚であるにも拘らず、本作以降Shuggieはアルバムを制作する機会に長いあいだ恵まれなかった。しかし、2013年にShuggieは新たな作品として、前述の「Magic」を含めた未発表のマテリアルによる『Wings Of Love』を突如発表し、彼が決して引退などしていなかったことを証明した。