Doug Clifford – Cosmo (1972)
隆盛を極めた60年代当時のサンフランシスコ勢の中で、いち早くサイケデリックのベールを脱ぎ捨ててしまったCreedence Clearwater Revivalは、アメリカ南部特有の泥臭いロックで一世を風靡した。実際にはそれらはCCRのルーツそのものというよりは、ライターであるJohn Fogertyのあくなき南部音楽への憧憬の結晶であったわけだが、それを存在感のあるリズムで常に支えていたのが、Doug Cliffordが生み出す武骨なドラム・サウンドだ。
Cliffordのソロ作『Cosmo』は、CCRのメンバー全員にライティング担当が分配された彼らのラストアルバム『Mardi Gras』から半年もしないうちに発表された。本作はそんな『Mardi Gras』における彼の担当パートの延長線ともいうべき作りになっており、重厚なブラスやゴスペル・チックなコーラスを大いに取り入れたスワンプ系ロックだ。
CCR時代の盟友であるStu Cookは今回リズム・ギターを担当しており、本作でベースを弾いているのはBooker T & The MG'sの名手Donald "Duck" Dunn。特に「I'm A Man」の緊迫したグルーヴは必聴だ。インタビューによればCliffordは、Jerry Lee Lewisを明らかに意識したような自らのボーカルを気に入っていないようだが、ラテンのリズムやニューオリンズの空気も取り入れたバンドの演奏は素晴らしいの一言だ。
偉大なバンドといえど、メンバーによるソロ・アルバムにまで脚光が当たるとは限らないものだ。だが『Cosmo』はスワンプ・ロックのファンならコレクションに加えるべき一枚と言えるだろう。永らく本作は彼の唯一の作品であったが、驚くことに2020年に二枚目のアルバムが発表されるという嬉しい出来事もあった。