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The Kinks – Kinda Kinks (1965)

 多くのブリティッシュ・ビート・グループが、The Beatlesに続けといわんばかりにアメリカをはじめとした海外へ進出していた時代において、The Kinksは大衆へ迎合することを始めから拒んでいたかのようにも見えた。その風変わりなバンド名には多くの大人たちが眉をひそめていたし、一部の雑誌は歯並びを治そうとしなかったことを理由にRay Daviesの写真を載せることを嫌がった。
 だが、Rayの曲作りの才能は確実に成長していた。ツアーの合間を縫って急ごしらえで作られた彼らのセカンド『Kinda Kinks』には、初期ロックンロールの粗雑さと、繊細なフォーク・ロックの萌芽、そして英国人らしいひねくれたポップ・センスがすでに見られている。No.1ヒット・シングル「Tired Of Waiting For You」は、それまでの激しいサウンドとはうって変わって穏やかなバラードだ。一聴して心に残るメロディに対して、歌詞は決して真直ぐなものではなくグズグズと煮え切らない男の恋心を歌ったものだが、これらが却ってThe Kinksの音楽性の広さを示すことになった。
 アルバムには典型的なノーザン・ソウルの「Dancing In The Street」がある一方で、「Nothin' In The World Can Stop Me Worryin' 'Bout That Girl」や「So Long」のようなアコースティック・ナンバーもバランスよく組み込まれている。とはいえ、そうした美しい曲とDave Daviesの歌う「Naggin' Woman」の直接的なブルースのフレーズが並んでいるのをどう評価するかは、好みが分かれるかもしれない。
 60年代後半に入ると、The Kinksもより作りこまれたサウンドやサイケデリックを展開していく。しかし、実は初期の3作を聴く限りでも彼らは目まぐるしい変化を遂げつつあったのは伝わってくるのである。