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Clifford Brown – Memorial Album (1956)

 天才トランぺッターであるClifford Brownのプレイは、レコードが世に出る以前から観客や同業者たちをつぎつぎと魅了していった。『A Night At Birdland』で演奏をともにしたArt Blakeyは、ステージが終わるとサックスのLou DonaldsonとBrownの両者をMessengersのメンバーに加入させようと打診をもちかけるほど(当時すでにMax Roachとのバンドを組んでいたため実現はしなかった)だったし、なにしろブルーノート・レーベルの長であるAlfred Lionの熱の入れようときたらそれ以上だった。
 1953年にBrownがニューヨークのクラブにやってくるという噂を聞きつけたLionは、彼の出演から数日も経たないうちにスタジオでの録音をおぜん立てしてみせた。本作のB面に収録されたこのBrownの初レコーディングはDonaldsonとのクインテット編成で、熱気とスピードにあふれたソロを飛ばす「Brownie Speaks」や、繊細でありながら迫力を感じさせるバラード「You Go To My Head」が聴きものだ。
 それからほどなくして、Gigi GryceとCharlie Rouseによるサックスやフルートを擁したBrownの初リーダー・セッションが録音され、このレコードのA面に収録された。のちにRoachとも吹き込む「Cherokee」のひな型をはじめとして、「Hymn Of The Orient」や「Minor Mood」といった、セクステット編成の名品といえる曲ばかりだ。
 いずれのセッションも53年にブルーノートの5000番台10インチで発表されていたものだが、56年にBrownが交通事故で夭折したことをうけ改めて追悼盤として世に出された。現在のCDではボーナス・トラックを含めたより完全な形で聴くことができる。いま思えば皮肉なことだが、これらの10インチ盤には〈ニュー・フェイス〉や〈ニュー・スター〉といった、ジャズ界の新星だったBrownに多大な期待を寄せるタイトルが冠されていた。