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Eddie Boyd with Peter Green's Fleetwood Mac – 7936 South Rhodes (1968)

 アーカンソー州にあるプランテーションで雇い主とケンカになり、あろうことか白人であるその男にクマデを突き刺して逃亡者となった日から、稀代のブルース・ピアニストEddie Boydの波乱の旅は始まった。ブルースの本場であるメンフィスをはじめ、シカゴのサウスサイドに拠点を移してからはJazz GillumやSonny Boy Williamsonといった最高のプレイヤーのセッションに参加している。そして多くの黒人ミュージシャンと同様に、戦後はヨーロッパへ移住した。
 このアルバムはBoydがイギリス滞在時に録音したもので、英国ブルースの立役者であるMike Vernonがプロデュースしている。オールスター・アルバムだった66年の『Eddie Boyd And His Blues Band』とは違い、バックをFleetwood Macのメンバーだけで固めているが、中でもギターのPeter Greenの貢献度は特筆に値する。スローな「Just The Blues」でもアップテンポなシャッフル・ナンバー「Backslap」でも、Greenはサイドに徹しており、Boydのピアノにぴったりと寄り添うように演奏している。
 Peter Chatmanと比較されることの多いBoydだが、この二人に共通するのは、たとえエレクトリック・バンドと共演してもバレルハウスの香りが常にピアノの音色に表現されていたことだ。アルバムにはブルースマンの圧倒的な存在感が通底している。「Just The Blues」の豪快に響くイントロは自分が主役であることを強く誇示しているし、チェス・レーベル時代に吹き込んだ「Third Degree」などは25年も経っているのに全くそのスタイルは変わっていない。
 オランダのロック・バンドCuby + Blizzardsと録音した『Praise The Blues』も同様だ。本作と聴き比べるのが楽しいアルバムである。