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Les DeMerle – Transfusion (1978)

 10代のころからLionel HamptonやIllinois Jacquetといった巨匠たちと仕事をこなしてきた早熟のドラマーLes DeMerleは、70年代に入ると移住先のLAで自身の2つめのグループである〈Transfusion〉を立ち上げた。78年にようやく発表されたこのアルバムは、DeMerleの持ち味の一つである手数の多い豪快なファンクに始まり、ラテン・ビートやスムースで上品なピアノ・ジャズまで、実に多彩な魅力があふれている。
 特に冒頭の「Moondial」などは語り草で、多くのヒップホップDJたちがDeMerleの放つ強力なブレイクの恩恵に浸ってきた。「Canned Heat Suite」は拍子や展開が目まぐるしく変化するエレキ・ジャズの名演となっている。一方「My Woman」はピアニストのMilcho Levievが提供した特に美しいバラードで、Leviev自身の繊細なソロはもちろん、あたたかみのあるRaul De Souzaのトロンボーンも見事だ。
 ラストの「Funk It! If You Can't Take A Joke」はエレキ初期のMiles Davisを思わせる抑制の効いたファンクのリフで始まり、ソロや演者の掛け声とDeMerleのビートが高まるにつれ、演奏全体の熱が高まっていく。注目すべきはEmmett Chapmanの独自の楽器であるエレキ・スティック(後にチャップマン・スティックとして知られる)のソロで、ギターとは似て非なる不思議な音を聴くことができる。
 サンプリング・ソースとして顧みられることの多いDeMerleのビートだが、妻であるBonnie Eiseleと後年に録音したスタンダード・ジャズにも名演は多い。いずれにしろ、セッションをまとめ上げて推進させる骨太な力こそが彼のドラムの魅力なのである。