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Black Ace – BK Turner And His Steel Guitar (1960)

 テキサス出身のBlack AceことB.K. Turnerは、戦前のデッカ・レーベルに数曲の録音を残していた。戦火を生き延び、軍を退役した後はアーフーリー・レーベルに再発見され、この貴重なアルバム『BK Turner And His Steel Guitar』を録音している。この時点で彼は戦前ブルースの生き証人であると同時に、膝の上にギターを乗せて弾く独特なスライド奏法の実践者の数少ない生き残りであった。
 1930年ごろOscar "Buddy" Woodsと出会ったTurnerは、酒場を中心にWoodsと行動を共にしながら彼のギターの技術を盗んだという。このハワイアン・ミュージックの影響を受けたスティール・ギターの味わいは、「Bad Times Stomp」のようなインスト曲で顕著だ。高らかに名乗りを上げる「I Am The Black Ace」は、戦前から歌われてきた彼の名刺代わりの一曲で、自らをカードゲームの切り札に見立てた不敵なブルースだ。
 Black Aceのレパートリーには、後の編集盤には収録されなかった「Father Along」というカントリー・スタイルのゴスペルも含まれている。そんな彼は1941年に敬虔なレイス・フィルム『The Blood Of Jesus』にも出演している。劇中、なじみのギター・スタイルで実際に披露していたのがB面ラストの「Golden Slipper Blues」で、ジュークジョイントらしい軽快なスライド・ソロが素晴らしい一曲だ。
 戦中は人前で演奏する機会を逸していたBlack Aceだが、大恐慌の時代を生き抜いたたくましいブルースの魂は確かに健在だ。ストンプ、ゴスペルをはじめとしたテキサス流の伝統的ブルースを味わうには格好のアルバムと言える。