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The Yardbirds – Five Live Yardbirds (1964)

 重箱の隅をつつくような言い方だが、The Yardbirdsの最初のスタジオ・アルバムは厳密にはJeff Beck在籍時に制作された1966年の『Yardbirds』である。ポップ・ミュージックの商業的な主戦場がもっぱらシングル盤だった時代において、彼らのデビューLPがライブ・アルバムになったのは無理もない話だが、バンドの人気と実力を示すうえでも、ロンドンにおける初期R&Bシーンを語るうえでも、本作が決して欠かせない一枚であることに変わりはない。『Five Live Yardbirds』は、Chuck Berryのロックンロールや戦前から続くブルース曲、果ては童謡のマザーグースにまで至るあらゆる音楽を、唸るギターと爆弾のようなビートで見事に統合したおそらく英国で最初のレコードだ。
 演奏前のメンバー紹介の時点で起こる熱狂的な盛り上がりだけでも、この5人がただならぬ存在であることが伝わってくる。そして最初の一曲「Too Much Monkey Business」を猛烈なパワーで歌い切った瞬間に、彼らが最高のバンドであることを確信するだろう。有名なシカゴ・ブルース「Smokestack Lightning」ではボーカルのKeith Relfが巧みなハープで真価を発揮している。軽快なリフで始まる「I'm A Man」は、後半になるとリズム隊のPaul Samwell-SmithとJim McCartyの息のぴったり合ったグルーヴが会場を完全に支配してしまう。
 本作でレコード・デビューしたギタリストのEric Claptonは、ブルースの古典ナンバー「Good Morning Little Schoolgirl」を自身がボーカルも執りつつ挑戦的なハイスピードでロックしている。一方、スローな「Five Long Years」のソロは実にのびのびとふるまっているのも印象的だ。
 The Yardbirdsは時代とメンバーの変遷とともに、サイケやハード・ロックといった新ジャンルを開拓していった偉大なグループだ。そしてその起点には本作のような真にピュアなR&Bサウンドが存在しているのである。