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Mickey Jupp – Juppanese (1978)

 パブロック・バンドLegendのフロントマンとして、後進であるDr. Feelgoodらに大いに影響を与えていることを踏まえると、Mickey Juppのソロ作品は、世に出るまでかなりの時間がかかったように思える。しかし、バック・ミュージシャンにNick LoweやDave EdmundsといったRockpileのメンバーや、B面ではキーボードのGary Brooker(Procol Harumの中心人物で、Juppとは音楽的に同郷とも言うべき間柄だ)とギターのChris Speddingなど、非常に豪華なメンバーを迎えていることを鑑みれば、その曲折にも納得が行くというものだろう。
 LoweのプロデュースによるA面は、Juppの真価であるラフなロックンロールのサウンドに満ちているし、ところどころニューオリンズへの憧憬さえ感じられるのが興味深い。「Old Rock 'N' Roller」や「You'll Never Get Me Up In One Of Those」は、まさにLegendを彷彿とさせる古き良きロック・ナンバーだ。B面はうって変わってBrookerらしいピアノをフィーチャーした「Pilot」のような印象深いバラードも収録されている。ビリー・ザ・キッドをテーマにした「The Ballad Of Billy Bonney」でBruce Lynchの骨太なベースにのせて歌い上げている様は、アメリカ的な郷愁さえ感じさせる。
 難航を極めてようやく出来上がったLPだが、まさに二面性を持ったアルバムと言える。Loweがアルバムの製作途中で半ば解雇されるように現場から離れたためだが、それが却って本作のドラマ性を引き立てているのも確かだ。プロデュースの方針がJuppの不興を買った「Switchboard Susan」は未収となり、Juppの次回作とLoweのソロ・アルバムにそれぞれ収録されたことが本作の人間関係を象徴している。