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Dolly Parton – Jolene (1974)

 70年代に入って加速度的に成長していくDolly Partonの曲作りの才能は、まず71年の『Coat Of Many Colors』で証明された。74年に発表された『Jolene』は、少女時代の家族の温かみを描いた『Coat Of Many Colors』とは対照的に、大人の男女の激しい愛情や女性のつらい孤独を描き、「Jolene」と「I Will Always Love You」という歴史に残る2つのシングル曲を生み出した。
 Chip Youngの繊細なギターをフィーチャーした「Jolene」では、自分の愛する男ではなく、それを奪っていく恋敵へ視点が向けられている。ふだんこそ朗らかなカントリーの似合うPartonが、絞り出すように歌う姿には誰もが胸をかきむしられる。「I Will Always Love You」は長い間シンガーとして組んでいたPorter Wagonerへ向けて書かれた別れのバラードで、かのElvis Presleyも惚れ込んだ一曲でもある。PresleyのマネージャーであるTom Parkerが出版権に関する強引な条件をPartonに出したために、Presleyのカバー・バージョンは幻となってしまったが、この曲は後にWhitney Houstonが大胆なソウルの解釈を施して世界的なヒットを果たした。
 とはいえ、この2曲だけで本作を語りきることなどできない。「Highlight Of My Life」や「It Must Be You」は確かな希望を感じさせるナンバーで、明朗なナッシュビルのサウンドがPartonをカントリー・クイーンの地位にしっかりとつなぎとめている。他にもWagonerのペンによる「Lonely Comin' Down」の熱いボーカルや、「When Someone Wants To Leave」の素朴なスティール・ギターの味わいによって、アルバム『Jolene』はカントリー史に残る名盤の1枚となった。