Plainsong – In Search Of Amelia Earhart (1972)
Iain Matthews本人も認めている通り、『In Search Of Amelia Earhart』はいわゆるコンセプト・アルバムではない。しかし、航空史の黎明期を彩ったアメリカ人飛行士Amelia Earhartに捧げられたこの70年代フォークの傑作は、米国の歴史に対する畏敬を真摯に表しているという点では非常に一貫している。
すでにソロ・キャリアを積み始めていたMatthewsは、アメリカ・ツアーをともにしたAndy Roberts、Dave Richards、Bob Rongaらと新たなバンドPlainsongを結成した。CBSのジャーナリストFred Goenerの書いたEarhartにまつわる書籍に感銘を受けた彼らは、Red River Daveの歌う「Amelia Earhart's Last Flight」のレコードを聴いて音楽的なインスピレーションを養ってから、本作のレコーディングにとりかかることにした。先のツアーにはRochard Thompsonも参加していたらしいが、彼がバンドへの加入を断っていなかったら本作はまた違った作風になっていただろう。
出来上がったのはカントリーとトラッド、つまり米英の空気が程よくブレンドされた珠玉の11曲だ。「True Story Of Amelia Earhart」は歴史の謎に思いをはせたときの独特の感慨に満ちており、ゴスペルの定番「I'll Fly Away」に至っては、Earhartを描く2曲に挟むように収録されたおかげで、他のどのアレンジにも無い独自のニュアンスが生まれている。ハウス・ロッキンなサウンドの中でやるせなさや焦燥感をあおる「Yo Yo Man」や「Diesel On My Tail」、Matthewsが敬愛したPaul Siebelの「Louise」といったカバー曲の選択もまた絶妙だ。
バンドは次作『Now We Are 3』を録音しておきながらも、未発表のうちに解散してしまう。このアルバムに向けて作られた中のいくつかの曲はMatthewsとRobertsのそれぞれのソロ作品に収録されることになった。