NOVI Singers – Bossa Nova (1967)
60年代も終わりに近づいてくると、ポーランドをはじめとした共産圏のミュージシャンたちもアメリカ音楽の模倣や追従を徐々にやめ、自らの個性と実力をいかに引き出すかを模索し始めた。そうしてピアニストKrzysztof Komedaはヨーロピアン・ジャズの傑作を生みだし、一方でポーランド史上最高のボーカル・グループNOVI Singersは、最初のLPにして果敢にもオリジナルのボサノヴァに挑戦している。
グループ名のNOVIという言葉が〈New Original Vocal Instruments〉を指すように、彼らの真骨頂である男女混成の繊細なスキャットでアルバムは構成されている。首都ワルシャワのショパン音楽アカデミーを修了したメンバーたちは、バイオリンやフルート、パーカッションに至るまで、いずれもが巧みな演奏者でもあった。
本作はピアニストAdam Makowiczが参加した初期のアルバムでもあり、「Go Go」での目立たないが洒脱に曲を演出するメロディは印象的だ。Janusz Mychのフルート(彼の後ろでヴァイブが鳴っているように聴こえるが、ジャケットにクレジットの記載はない)を押し出した「How Could We Return To The Past Moment」は超正統派なボサノヴァに仕上がっている。「Next, Please」ではリーダーBernard Kawkaのアップ・テンポなソロが飛び出し、そして終盤に4人の豪快なボーカル・アンサンブルに展開していくさまは見事の一言である。
ラテン風というコンセプトのもとに硬軟を織り交ぜ、コーラスの持つ表現力を最大限に引き出した『Bossa Nova』は、非ジャズ圏の、しかもデビューLPにしてはいささか早熟すぎるようにも感じられる。本作の3年後には重厚なファンクのリズムまでも取り込んでしまうほどのグループなのだから、さほど驚くことではないのかもしれないが。