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Juke Boy Bonner – The Legacy Of The Blues Vol. 5 (1972)

 Juke Boy Bonnerは黒人社会における生活に密接に寄りそったブルースマンであり、Samuel B. Chartersによれば彼は現代アメリカ版の〈グリオ〉ともいうべき存在でもあった。つまりリアルな生活を描き、さらに社会を皮肉る本来の意味での〈詩人〉として、Chartersは彼を讃えているのである。
 Bonnerのキャリアの中でも特に重要な作品は、アーフーリー・レーベルから発表された一連のLPが挙げられるが、ソネットの〈Legacy Of The Blues〉シリーズでピックアップされた本作も聴き逃せない一枚だ。このアルバムには彼の持っていた社会風刺のセンスや、ストレートかつ赤裸々に語られる生い立ちなど、Bonnerを知るうえで欠かせない重要曲が入っている。
 時の大統領ニクソンの金融政策を批判した「Funny Money」はLightnin' Hopkinsに影響を受けた彼らしい社会派ブルースの傑作だ。また「I'm A Bluesman」では、前半の自身のリアルな経験と、後半の典型的なブルース体験を対比するように綴っている。
 ブルースの持つ時事性はともかく、卓越したギターとハーモニカのワンマン・スタイルにはあまりクセがなく、非常に聴きやすい。彼の歌が今も輝きを失っていないのは、根底に描かれている社会の世知辛さが時間も場所も超えた普遍的なものであるからに他ならない。