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Flower Travellin' Band – Satori (1971)

 当時世界中で雨後の筍のように生まれていたヘヴィブルース・バンドの一つであったFlower Travellin' Bandは、1971年の4月に変貌を遂げた。東洋思想に根差したコンセプトが通底している『Satori』の勝ち得た高い評価は、単なるサイケデリックとエスニック趣味の取り合わせによるものだけではない。ジョー山中の力強いハイトーン・ボイスや、石間秀樹の印象的なスライド・ギターといった、GS時代からの試行によって生まれた確かな実力があってのものだった。
 前作では顕著だったBlack Sabbathの影響はなおも残っている。外連味のある曲の導入自体はいかにもプログレ的なものだが、「Satori, Part 1」の骨格を構成する重たいリフは至って明快なものだ。「Satori, Part 3」のメロディは、後に原爆をモチーフにした反戦歌「Hiroshima」で援用されており、アルバム『Satori』では希薄だった社会的なメッセージ性が非常に色濃いものになっている。
 「Satori, Part 2」では儀式めいたドラムのフレーズが反復されてスピリチュアルな歌詞に拍車をかけ、石間のギターと山中のシャウトは最高潮へと達していく。ライブでもたびたび演奏されたこの曲は、彼らのキャリアを代表する名曲となった。「Satori, Part 5」で繰り広げられているのは、一転してブルージーな演歌調のジャムだ。
 Flower Travellin' Bandが啓いた悟りの境地は、インド音楽やアフリカの呪術といった地理的なモチーフを超越し、宇宙まで包括しているようだ。『Satori』はジャパニーズ・ロックを代表とする名盤となったが、その哲学や表現方法は無国籍そのものである。