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The City – Now That Everything's Been Said (1968)

 60年代の初期からソングライターとして活躍していたCarole Kingは、のちに自身の2番目の夫となるCharles Larkey、そして友人のDanny Kortchmarと1968年にThe Cityを結成し、本格的なシンガーとしての初めてのアルバムを録音した。当時こそ正当なレセプションを得ることはなかったが、現在では名盤『Tapestry』へ通ずる重要作としての位置を占めており、そうそうたるバンドや歌い手たちが彼女らの歌をカバーしている。
 ブラス・ロックの雄Blood, Sweat & Tearsは70年代のあいだに、「Hi-De-Ho」とワルツ調の「Snow Queen」の2曲を本作から取り上げている。特にDavid Clayton-Thomasのボーカルが面目躍如の活躍を見せた前者はライブの定番となった。本作ではKingのおなじみのスタイルであるピアノの弾き語りから始まるが、カントリーっぽいフィドルのソロを交えた温かみのあるアレンジが、個性的で素晴らしい仕上がりを見せている。
 Kingの歌はフォークやソフト・ロックの界隈で好んでカバーされたが、The Byrdsがのちにカントリー・ロックとして発表する「Wasn't Born To Follow」は、エッジの立ったKortchmarのギターが印象的だ。一方「Paradise Alley」で現れるサイケの影響など、時代を感じさせる場面もちらほら存在する。「My Sweet Home」はAngelic Gospel Singersが歌っていたモダン・ゴスペルで、The Cityのコーラス・グループとしての価値を証明する一曲でもある。
 すぐに廃盤となった『Now That Everything's Been Said』は、のちのKingの爆発的なブレイクも相まって、早くから幻の名盤の地位を獲得してしまった。しかし、たとえ彼女が『Tapestry』を発表していなかったとしても、素朴なサウンドと男女混声のリラックスしたコーラスに彩られた本作は、魅力的なポップスの宝庫として評価されていたに違いない。