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? – DOGE 001 (2014)

 インターネット・ミームから時たま生み出される、想像を超えたクリエイティビティの結晶の一例が本作だ。海外の画像投稿系サイトから飛び出したこの冗談のような12インチは、意外にもシカゴやニューヨークの系統を汲んだ、典型的にして実直なディープ・ハウスを聴かせる。完全に匿名で発表されたレコードだが非常に興味深い内容だ。
 その名の通りオルガンをメインに据えつつ非常にシンプルな構成の「Organ House」から、アシッド・ハウス的な浮遊感・トリップ感が心地よい「A Way With Her」まで、一貫してどっしりとしたビートとグルーヴを軸に、一枚のアナログ内で展開が次第に複雑化していく。こなれたようにクラップやボーカルをところどころ織り交ぜる手際はまさに確信犯的であり、単なる素人によるトラックでないことは誰もが納得しうるところだ。
 元ネタを知るよしもないハウス・ミュージック愛好家からは予想外の評価を得た本作だが、それもレーベルの思うつぼといったところなのだろう。ドッジ・レーベルは、この他にも猫のミームをモチーフにしたアナログ『(heavy breathing)』を発表し、3枚目の予告を残して現在は完全に沈黙してしまった。UKのレーベルということ以外は謎に包まれた存在のままである。ちなみに不敵な表情を湛えた柴犬のかぼすちゃんは、昨年の11月に14歳の誕生日を迎えたようだ。