Idris Muhammad – Power Of Soul (1974)
ニューオリンズ生まれのドラマーLeo Morrisはイスラムに帰依した後にIdris Muhammadと名前を変えてブルーノートやプレスティッジのジャズ・ファンク・シーンに大きな爪痕を残している。本作はディスコ色が強くなる以前のジャズ・ファンク期の傑作であり、Jimi Hendrixのカバー曲や、キーボードで参加したBob Jamesが書いたナンバーを時にタイトに、時に伸びやかにプレイしてみせた。
「Power Of Soul」はHendrixがBand Of Gypsysで披露したファンク・ロックの名曲で、前半のメイン・テーマを構成するドラミングはBuddy Milesのそれよりも理性的でクールだが、Joe Beckの感情的なギター・ソロが高まるにつれて演奏全体が熱を帯びていく。Muhammadと同じくクドゥ・レーベルの中心的アーティストであるGrover Washington, Jr.は「Loran's Dance」を提供しており、Jamesのメロウなキーボードを下地に、Randy Breckerの目まぐるしさとWashingtonのアーバンなソロが見事なコントラストを生み出している。
参加したミュージシャンの演奏はいずれも個性的であるにも拘らず、CTIらしいソウルやファンクの風味を損なうことなく一貫している。「Power Of Soul」のビートはNotorious B.I.G.が、特に「Loran's Dance」はBeastie Boysが革新的なサンプリングを施した名盤『Paul's Boutique』の中で印象的に使用した。