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John Denver – Rocky Mountain High (1972)

 自然を愛する温和な見た目とは裏腹に、破天荒なエピソードも多いJohn Denver。『Rocky Mountain High』は彼のSSWとしての個性が詰まったきわめて魅力的なアルバムだ。Denverは自身の卓越した歌声とギターを駆使して、雄大なアメリカの山々を賛美する。また、そうした自然に魅了されることが、現代の文明生活においては時に生きづらさのリスクを呼び寄せることも、彼は歌の中で示唆している。
 現在コロラド州の公式の州歌としても親しまれている名曲「Rocky Mountain High」が、薬物使用を思わせる●●●●意味深な歌詞によって現在でも物議をかもし続けているのは、彼の予想には無かったことだろう。とにかく、この歌が自然の壮大なる美を讃えた歌であることに疑問の余地はないのだが、コロラド州の公園に設置されている歌碑から〈ハイ〉という言葉を含んだ詞の一部が削除されていることもまた事実なのだ。
 「Mother Nature's Son」はDenverのもう一つのライフワークともいえるThe Beatlesの美しいカバーである。74年の『An Evening With』に収録されたライブ・バージョンもまた絶品で、いずれも彼のシンガーとしての力量をばっちりと証明する名演だ。アルバムの後半は変則的な組曲形式の「Season Suite」が収録されており、特にインストの第4部では、冬と春のはざまに生まれる繊細な高揚をギターで表現している。
 「For Baby (For Bobbie)」や「Paradise」といったカントリー・テイストや流麗なコーラスを追求したナンバーも聴き逃せない。ひとえに隙のない一枚である。