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Fillmore Slim – The Game (2004)

 Ghostface Killahの「Pimpin' Chipp」のリリックの中にはGoldieの名と共にブルースマンFillmore Slimが登場する。かつてはClarence Simsとして知られた彼は、カリフォルニアにあるフィルモア劇場の界隈では悪名高いピンプであり、90年代には既にOG〈Original Gangsta〉としてヒップホップ・アーティストからの尊敬を集めていた。
 本作には彼の屈折したキャリアが反映されている。不敵なタイトル・トラック「The Game」には、ブルース・バージョンとラッパーFrank Sticks(何を隠そうSimsの息子である)をフィーチャーしたバージョンが存在する。手慣れたテナーサックスのBobby Webbは、Simsの87年のアルバム・デビュー以来長年演奏を共にした戦友とも言うべき存在だ。
 アルバムは徹底して女とキャデラックに彩られているが、Gary Smithのハープ(Little Walterの影響を強く感じさせる)が際立つシカゴ風の「Can't Get Enough」、そして「Playboy」のようなファンキー・ブルースなど、演奏のスタイルは様々だ。そして同時に、職人気質のギタリストFrank "Paris Slim" Goldwasserの存在が、どんな場面でもSimsの歌を見事に引き立てている。終盤の「Downtown Fresno」は本作のサウンド面を象徴するような名演で、各々のプレイヤーの存在感、持ち味が存分に生かされている。