Yehudi Menuhin & Stéphane Grappelli – Fascinating Rhythm (1975)
多様なジャンルを折衷したことで知られるYehudi Menuhinとフランスの巨匠Stéphane Grappelliは、1973年に放送されたBBCの音楽番組での共演をきっかけに意気投合し、EMI系のレーベルにたくさんのアルバムを残した。『Fascinating Rhythm』は枚数で言えば2枚目にあたる作品だが、トラック・リストを見るとGeorge Gershwin、Cole Porter、Jerome Kernといった、古くから大衆に親しまれてきたポップ・ソングを中心に取り上げているのがわかる。すでにクラシック音楽とジャズをそれぞれ代表するヴァイオリニストだったふたりは、今さら〈音楽ジャンルの融合〉といったような固いお題目を掲げることも、互いの腕を競い合ったりもせず、ただただ華麗にスイングする。
Gershwinの「Summertime」ではMenuhinの美しいメロディにまず息をのむが、Grappelliは低音を強調したジャズらしいソロで絶妙なコントラストを演奏にもたらしている。アップ・テンポの「Nice Work If You Can Get It」やミディアムの「Looking At You」は、それぞれ魅惑的なスイング・ナンバーで、特に後者ではピアノ・ソロも執るAlan Clareが実にいい仕事をしている。他にも「Fascinatin' Rhythm」や「All The Things You Are」における息のピッタリ合ったヴァイオリンのプレイや、Grappelliが抑制の効いた電子ピアノでMenuhinをひき立てる「Menuet Pour Menuhin」も聴きものだ。
ジャケットはいくつかの種類があるが、二人の本国であるアメリカとフランスで発売されたバージョンが特に印象深い。肩を並べてむつまじく笑うMenuhinとGrappelliの姿は本作の音楽の雰囲気をそのまま切り取っているようだ。