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Jellybread – Jellybread (1969)

 Booker T. & The M.G.'sの曲からバンド名を採ったJellybreadは、イギリスはブライトンにあるサセックス大学に通う学生グループだった。ブームの中とはいえセミプロのブルース・バンドがレコードを作るのは大変だっただろう。だが彼らが幸運だったのはピアニスト兼ボーカリストのPete Wingfieldの知り合いに、当時レコーディング・エンジニアの卵だった若き日のJohn Holbrook(後に多くのベアズヴィルの作品に携わることになる)がいたことだった。上司の目の届かない頃合いを見計らって、こっそりとスタジオで録音された6曲のピアノ・ブルースは、自主制作盤として300枚のコピーがプレスされ、彼らのライブ会場で販売されていった。
 後のアルバムではプログレやジャズ・ロックにも接近していく彼らだが、正真正銘のファーストである本作では正統派のブルース・ロックを追求している。シカゴ・ブルースの定番曲である「That's Alright」は、ピアノが印象的なイントロに始まって、テンポやアレンジも実に個性的な仕上がり。一部のリリースではArthur Crudupがクレジットされているが、もちろんこれは間違いで原曲はJimmy Rogersによるものだ。また、哀愁に満ちたスロー・ナンバーの「Evening」や、軽快なシャッフルの「Don't Want No Woman」には、そこはかとないFleetwood Macからの影響を感じさせる。
 「Driving Wheel」も実に面白い。冒頭はRoosevelt Sykesの原曲(それも戦後に録音したバージョンだろう)を強く意識した独演で、その後Paul Butlerのギター・ソロに続き、バンドのアンサンブルはラストに向かうにつれてどんどんとパワーを増していく。演奏こそ粗削りだが、こうしたアレンジに工夫を凝らした内容には、ブルース・ファンを強くうならせる茶目っ気とひらめきが満ちている。事実この自主盤がきっかけとなってJellybreadはブルー・ホライゾン・レーベルと契約を結ぶことになった。