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Blue Cheer – Blue Cheer (1969)

 最初の2枚のLPを轟音と濃厚なアシッドに捧げたBlue Cheerは、ギタリストRandy Holdenが脱退した後、オリジナル曲を中心としたルーツ・ミュージック主義へ転向していく。以前はサポート・メンバーだったキーボードのRalph Burns Kelloggがもたらす多彩なサウンドによって彼らの新しいヴィジョンはより強固なものとなり、本作『Blue Cheer』の中で見事に結実した。
 サウンドにはカントリーやブルーアイド・ソウルの風が吹き込んでおり、スワンプ的で穏やかなグルーヴにあふれる「Natural Man」には、以前では考えられないくらいに、程よく肩の力が抜けたルーズな魅力がある。Kelloggのピアノが印象的な「The Same Old Story」ではThe Band風な雰囲気を見せながらも、Bruce Stephensの一本気なブルース・ギターが心地よく聴く者の心に響く。「Rock And Roll Queens」はオールド・スタイルのロックンロールで、Dickie Petersonのしゃがれた独特の歌唱スタイルが健在であることの証明でもある。
 別名をEthan JamesというKelloggは、後にMinutemenの『Double Nickels On The Dime』をはじめとしたSST系の諸アルバムをプロデュースする。ハードコア界の大物、そして中世の古楽器ハーディガーディ奏者としても知られる彼が、Blue Cheerのフィリップス・レーベル期の後半を支えた重要な存在であることは間違いない。