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Thee Midniters – Thee Midniters (1965)

 Ritchie ValensやThe Champsの次世代グループとしてチカーノ・ロックの礎を築いたThee Midnitersは、本作の1曲目を飾った「Whittier Blvd.」の強烈な印象もあってか、初期のガレージ・ロックの枠組みの中で語られることが多い。とはいえ、コンガやブラス・セクションを擁した7人からなる大編成のサウンドと"Little Willie" Garciaの伸びやかな歌声は、当時のLAのバンドの中でも特にソウルフルで、同時に迫力に満ちている。 
 Thee Midnitersが持つR&Bの優れた素養は「Land Of 1000 Dances」の熱いカバー、そしてGarciaのスイート・ソウルがさく裂する「I Need Someone」や「That's All」などで顕著だ。前者は比較的ミドルなテンポだがその分ホーンの響きが重厚に感じられる名演で、彼らの最初のシングルでは2パートに分かれたライブ・バージョンが収録されて話題を呼んだ。
 一方「Whittier Blvd.」はGeorge Dominguezのフリーキーなギターが活きた熱狂的な演奏を展開している。また「Money」ではLarry Rendonの酔っぱらったようなオルガンと偏執狂のような歌詞がお互いを高めあい、まるでサイケデリックのような仕上がりだ。アレンジを加えずにカバーされる「Johnny B. Goode」は本作の中でも特にストレートなロックンロールを追求した一曲で、逆説的にバンドの音楽性の幅の広さを示している。
 バンド名についた冠詞の〈Thee〉は、当初はソウル歌手Hank Ballardが率いた同名のバック・バンドとの混同を避けるための表記ずらしに過ぎなかったが、いつの間にかガレージ・ロック・シーンにおける風変わりな慣習のひとつになった。Thee HeadcoatsやThee Oh Seesといった後世のカルト・バンドがこぞってこれに追従している。