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N.S.U. – Turn On, Or Turn Me Down (1969)

 グラスゴー出身のバンドN.S.U.はその名の通りCreamから受けた影響を隠そうとしないが、彼らの音楽がEric Claptonの攻撃的なギターやJack BruceとGinger Bakerの喧嘩じみたリズム・セッションの単なる模倣なのか、と問われればそうとも限らない。彼らには質の高い多くのオリジナル・ナンバーも、ブルースを意欲的にアレンジする確かな実力も備わっていた。
 まず「Turn On, Or Turn Me Down」の重厚なロック・アンサンブルが耳に飛び込んでくるが、John "Pettsie" Pettigrewの渋いボーカルと女性コーラスの掛け合いもまた印象的で、これだけでもサイケ・ファンの心を掴んでしまう。さらに、強力なイントロでグイグイと聴き手を引き込むガレージ・ナンバー「You Can't Take It From My Heart」や、アシッド・フォーク的な美しさを持つ「Love Talk」のような多彩な曲が次々と飛び出す。
 「Stoned」ではバロック調のメロディの挿入や、ラストで高速のブギになだれ込む展開も見られるが、これらは本作がプログレッシブ・ロックにも分類される理由でもある。レコードの最後を飾る「On The Road」はそれまでとは一転してボーカルを排したジャムだ。この曲の本来のタイトルは「On The Road Again」といい、多くのバンドがカバーしたブルース・クラシックの一つだ。バンドはこの曲でサイケデリックの持つ陰の面を浮き彫りにしており、特にReaのギターはAl Wilsonのそれを彷彿とさせている。
 N.S.U.は同シーンの多くのグループと同様に一枚のレコードを残して消滅した。当然ながらオリジナル盤はコレクターズ・アイテムとして知られている。