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Spooner Oldham – Pot Luck (1972)

 Spooner Oldhamは、1960年代にAretha FranklinやJames & Bobby Purifyをはじめとした偉大なシンガーたちにヒット・ソングを提供した名ライターのひとりで、レコーディング・スタジオの中では、卓越したキーボードさばきで印象的なメロディをもたらす匠でもあった。彼の数少ないリーダー・アルバムの本作は、それまでの自身の仕事を総括する素晴らしいドキュメントに仕上がっている。
 「The Lord Loves A Rolling Stone」は作詞作曲におけるOldhamの相方ともいえるDan Pennとの共作曲で、翌1973年にRoger McGuinnが初のソロ・アルバムで取り上げることになるナンバーだ。それまでボーカリストとしては全く知られていなかったOldhamは、McGuinn版よりいくらか朴訥なテイストでこの曲を歌い上げている。驚くことに「1980」ではスペース・ロック風のサイケな演出が飛び出してくるが、それと同じくらい意外なのは、「Life's Little Package Of Puzzles」で響きわたるフィドルの音色のような、カントリー音楽のエッセンスが本作に非常に多く含まれていることだ。
 「Profile」は11分にわたる圧巻のメドレーだ。この曲は「When A Man Loves A Woman」、「I Never Loved A Man」そして「Respect」といった、Oldhamがかつて録音に貢献したアトランティック・ソウルの名曲たちで構成されており、さらにそのあいだに「Kentucky Grass」や「The New World」という自作のカントリー・ナンバーが挿入されている。このファンクとカントリーでできた至高のサンドイッチは、Tony Joe Whiteに提供した名曲「My Friend」のセルフ・カバーで完成する。
 アルバムの最後を締めくくるゴスペル「Will The Circle Be Unbroken」も素晴らしい。力強いピアノとホーン、それと対照的な飾らないハープの音色が感動的な名演で、82年発表の『Spare Change』にはインストのバージョンが収録された。