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The Nitty Gritty Dirt Band – Alive! (1969)

 1970年のシングル「Mr. Bojangles」のスマッシュ・ヒット、そして極めつけとなった72年のゴールド・ディスク『Will The Circle Be Unbroken』によって、誰もがNGDBをカントリー・ロック界の救世主であると認めた。しかし、リバティー・レーベル時代の彼らはスキッフル、ブルーグラスといった多彩なルーツ音楽を志向していたグループで、そういう意味で言えばJim Kweskinのバンドとよく似ていた。加えて、重厚なエレクトリック・ブルースまでも飛び出す貪欲さは、いかにも西海岸らしいともいえる。
 本作の録音は67年か68年ごろである。初期のレパートリーである「Crazy Words, Crazy Tune」は戦前のジャズ曲で、Kweskinと同じようにジャグ・バンド形式で軽快に演奏されている。この曲はアンコールで極端におどけながら歌われるが、全員がマルチ・プレイヤーであるため、聴く者は終始その演奏能力に息を呑まされる。トラッドな雰囲気を漂わせた「Buy For Me The Rain」はメロディがひたすらに美しく、「Foggy Mountain Breakdown」ではJohn McEuenの高速のバンジョーがさく裂する。意外なのはMCでBlue Cheerの名前に触れた後に披露される「Rock Me Baby」で、豪快なシカゴ流のギター・ワークは超一流の出来だ。
 彼らのカントリー・バンドとしての本領は「Candy Man」や「Fat Boys」でいかんなく発揮され、続く「Alligator Man」では温かみのあるザディコのアコーディオンに魅了される。こうして書かれると実に目まぐるしいアルバムに思えるだろうが、そのすべてが卓越した最高のミュージシャンによって演奏されている、というだけで本作は傑作と呼ぶに値する一枚なのだ。