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Waylon Jennings – Ol' Waylon (1977)

 リーゼントを捨ててワイルドな髭を蓄えていた1970年代の中期はWaylon Jenningsにとってアウトロー・カントリーの黄金時代で、同時に音楽的に最も充実した時期でもある。旧態依然とした音楽ビジネスのあり方にNOを突きつけ、Billy Joe Shaverのような優れたライターにも出会ったことで、洗練されたサウンドと深みのある歌詞を武器に名作を連発していった。
 77年の『Ol' Waylon』はJenningsの最も成功したアルバムだが、彼が1曲目の「Luckenbach, Texas (Back To The Basics Of Love)」のなかで、さっそくアメリカ的な物質主義に別れを告げているのは皮肉な事実である。この歌は旧い友人であるWillie Nelsonのコーラスをフィーチャーしており、同時に歌詞の中には彼の「Blue Eyes Crying In The Rain」の曲名も登場する。
 カバー曲に印象深いものが多いのも本作の特徴で、Kenny Rogersが同年にヒットさせた切ないバラード「Lucille」、Neil Diamondの名曲を雄大に歌い上げる「Sweet Caroline」などがある。Elvis Presleyのヒット・メドレーは懐かしい選曲(いずれもArthur Crudupのナンバー)だが、プロデューサーがChips Momanなのもあってか、実にナッシュビルらしいサウンドに仕上がっている。
 〈Willie〉の名が歌詞にふたたび登場する「If You See Me Getting Smaller」は彼のどこか弱気な心情が吐露された。一方「This Is Getting Funny (But There Ain't Nobody Laughing)」はピアノとファンキーなドラムのアレンジが新鮮なサウンドをもたらしている。
 『Ol' Waylon』はカントリーの枠を超えてヒットした。それだけJenningsの歌には広く人々の心に訴えるものがあったということだ。