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The Who – The Who Sell Out (1967)

 1967年は英国R&Bにとって特別な年で、CreamだけでなくThe Rolling Stonesまでもがサイケの色に染まる一方、The Kinksは『Something Else』においてイギリス流のやり方でロックを作りはじめた。彼らと同様にThe Whoの『Sell Out』も、サイケデリアの開花や消費社会への英国風のからかい(ジャケ裏のJohn Entwistleの写真は特に傑作だ)が主に注目されるのだが、それと同じくらい重要なのは、彼らが架空のラジオ・プログラムに見立てて本作を仕上げていることだ。
 奇しくもThe Beatlesの『Sgt. Pepers~』と並んでコンセプト・アルバムの先駆けとなった『Sell Out』には、歴史の人物の代わりに実在の商品名がズラリと並んでいる。ご丁寧に曲間にCM風のトラックを挟んでいるが、いずれのメロディもクオリティが高いのはさすがの一言である。
 John "Speedy" Keenによる珍しい外部提供曲「Armenia City In The Sky」やオルガンを大々的に導入した「Relax」はこの時代らしい名品。「Rael 1 & 2」は『Tommy』の「Sparks」やリーズ大学でのライブ・ジャムにも登場したパワフルなリフが印象的だ。Entwistleが書いた不穏な童話風の「Silas Stingy」も聴き逃せない。
 結局そうそうにサイケデリックに見切りをつけてしまったThe Whoは、アルバム『A Quick One』で生まれていたロック・オペラのアイデアを『Tommy』として発展させていく。本作からシングル・カットされたラブソング「I Can See For Miles」は、Pete Townshendのスケールの大きな歌詞の世界観が心を打つ。五感(特に視覚)が肉体から解き放たれたようなこの独特のカタルシスは、『Tommy』においても重要なファクターのひとつになっている。