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New Order – Movement (1981)

 New Orderはデビューの時点で岐路に立たされていた。前年に亡くなったIan Curtisとの取り決めで、〈一人でもメンバーが欠ければJoy Divisionの名は使わない〉としていた彼らは、グループ名を新たに『Movement』を録音したものの、本作のサウンドや詞にはCurtisの影を引きずった不安と葛藤が満ちている。
 Stephen Morrisのナイフのように鋭いビートとBernard Sumnerのギターに始まる「Dreams Never End」や「Senses」はまさにJDの延長線上にある曲で、「Truth」はGillian Gilbertの切ないシンセが印象的だ。それだけにSumnerのボーカルがCurtis然としていることに胸が締め付けられていくのである。
 〈Ian Curtis Buried〉の頭文字から採られた「ICB」はCurtisに捧げられてはいるが、歌詞そのものは彼がいなくなってポッカリと空いた自身の心の穴に向かって放たれているような気分になる。バンドが真に彼と決別を遂げるには、『Low-Life』に収録された「Elegia」まで待つ必要があるのはご存じの通りだ。
 本作の全貌を知るためには、2008年以降のボーナス・ディスクに収録されたアルバム未収のシングル曲の数々に触れる必要がある。「Everything's Gone Green」や「Temptation」といった画期的なエレクトロ・ナンバーが目白押しであり、同時に彼らがNew Orderの門出にはこうした曲がふさわしくないと判断したことは容易に想像できるだろう。