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John Paul Hammond – I Can Tell (1967)

 John Paul Hammondの『I Can Tell』は60年代NYにおけるブルース・シーンの中でも最も重要な1枚であり、ロック方面から見ても、Bill Wyman、The BandのメンバーとなるRobbie RobertsonとRick Dankoといったルーツ音楽志向の重要人物たちが、このアルバムをサポートしている。
 『I Can Tell』は当初、高名な作曲家コンビLeiber & Stollerの立ち上げたレッド・バードというレーベルで録音された作品だった。しかし、経営難を抱えていたレッド・バードはすぐにマスター・テープを資金繰りのために売却してしまったため、本作はテープを買い取ったアトランティック・レーベルの作品として発売された。
 シカゴのThe Butterfield Blues Bandがブルース・ロックというジャンルを確立していた当時において、Hammondのスタイルはむしろ彼らよりもシカゴ然として聴こえてくる。驚異的なのは「I'm In The Mood」や「Smokestack Lightning」で、シンプルなリズム・セクションをバックに骨太な歌をぶつけることで、John Lee HookerやHowlin' Wolfのスタイルを見事に踏襲している。一方、ファンキーな「I Wish You Would」ではRobertsonのとげとげしいロック・ギターに思わず息をのむ。
 「Brown Eyed Handsome Man」で粋なピアノを聴かせるのは、60年代のポップ・ソウルに貢献してきた名手Artie Butlerである。Hammondがプレイヤーとして特に光っているのはLittle Walterの名曲「You're So Fine」で、軽快なボーカルに呼応する巧みなハープが聴ける。続く「Going To New York」でさりげなくデルタ・スタイルに立ち返ってみせるのも見事な流れだ。
 CD版では70年の『Southern Fried』からのトラックが追加収録されている。これはDuane AllmanやEddie Hintonといった参加ミュージシャンの人脈が、本作同様に興味深いことからくるものであろう。