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Rufus Thomas – Tiger Man: Earliest Recordings 1950-1957 (2008)

 偉大なエンターテイナーRufus Thomasは、劇場ではコメディアンとして、WDIAでは有力なラジオDJとして活躍しており、あるいはサン・レコード社から特大のヒットを放ったR&Bシンガーでもあった。強力なシャウトと芸達者なパフォーマンスに、粋なジョークをさりげなく結びつけた個性的なサウンドは、1950年代のメンフィスに住む黒人たちの不動の人気を獲得した。
 R&Bチャートの3位に入った最大のヒット曲である「Bear Cat」は、まず耳に飛び込んでくるThomasの声帯模写が強烈だ。この曲は"Big Mama" Thorntonが歌った「Hound Dog」への男性目線のアンサー・ソングであったと同時に、著作権者から訴訟を起こされたことでサンの経営が傾きかけた、という曰くつきの歌でもある。一方タイトル・トラックとなった「Tiger Man」は、後にElvis Presleyがカバーしたことで一躍知名度が上がった熱いロックンロールだ。
 クラシックなスタイルの「I'll Be A Good Boy」や、変名で録音されたピアノ・ブギ「Beer Bottle Boogie」、ガヤガヤと騒々しい「Crazy About You Baby」など、どの曲も後のファンク路線を思わせるノリのよさが爆発する。「Junita」や「Married Woman」では文字通りの〈泣き〉のブルースを歌うが、「Walkin' In The Rain」のような情感あふれるナンバーではしっとりと歌声が決まっているおかげで、Thomasのセンスの洗練性がしっかりとリスナーへ伝わってくる。
 本作の録音以降も、ThomasはR&Bの歴史を作った。当時サテライトという名前だったスタックスで、娘のCarla Thomasとデュエットした「Cause I Love You」がヒットした。この名曲はすぐさまアトランティックの目にとまり、同社とスタックスが業務提携を結ぶきっかけとなった。