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Fairport Convention ‎– Liege & Lief (1969)

 前作『Unhalfbricking』から兆候は見られていた。古い民謡をロックに生まれ変わらせた「A Sailor's Life」は、フォーク・ファンのあいだで大いに物議をかもしたが、Fairport Conventionはこの『Liege & Lief』で、アメリカの追従でない英国流のフォーク・ロックをより明確かつ秀逸な形で提示してみせた。
 Martin Lambleの自動車事故による死やIan Matthewsの脱退など、本作が生まれるまでにバンドは多くの人材を失ってはいるが、一方で重要な出会いもあった。68年に加入したSandy Dennyは古典への造詣が深く、彼女の清流のような歌声はトラッド・フォークを取りいれた本作のコンセプトにこれ以上ない説得力を与えた。本作の中でも数少ないオリジナルである「Come All Ye」は、彼女の美しいボーカルとエレクトリックのサウンドが見事に両立した名演だ。膨大な数の民謡からベースのAshley Hutchingsが選んだトラディショナル・ソングたちは、いずれも現代的なアレンジが施された。特にB面に収録されたメドレーは、Dave Swarbrickのフィドルが印象的な全く新しいダンス音楽になっている。「Tam Lin」のイントロと重々しいリフ、そして「Matty Groves」の後半のインプロ部では、技巧派Richard Thompsonが見事なギターでバンドをけん引していく。
 『Liege & Lief』というアルバムは、伝統的なフォーク・ファンにとってはDylanのエレクトリック転向にも劣らぬ暴挙(彼らには前作『Unhalfbricking』さえも十分冒涜的な作品に映った)だった。しかし、結果的に本作は最重要作として歴史にはっきりと刻まれた。Fairport Conventionは電気で増幅されたトラッド・フォークが、ロックの世界でも通用することを証明したのである。