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Bobby Charles – Chess Masters (1983)

 ルイジアナに生まれ、黒人とアケイディアンの文化を吸収して育ったBobby Charlesは、50~60年代にかけてレコーディング・アーティストとして活動すると同時に、多くのロックンロールの古典を生み出してきた。R&Bのセンスが満ちたCharlesの作品は、Fats DominoやBill Haleyといった巨人たちによって歌われてきたが、Charles自身のシンガーとしての才能は、自らの名を冠したアルバム『Bobby Charles』でようやく人々に評価された。それは実に1972年になってからのことで、そのころの彼の音楽性はThe Bandらをとりまく人脈とともに〈ウッドストック・ロック〉などと表現されていた。
 チェス・レーベルの音源をコンパイルした『Chess Masters』は、初期のCharlesならではの力強いブルース・フィーリングにあふれた歌声を堪能できる。Haleyがヒットさせた「See You Later, Alligator」のオリジナル版となった「Later Alligator」は言うまでもなく本作のハイライトのひとつである。似たような韻の踏み方が印象的な「Take It Easy Greasy」は、Charlesのシャウトが特に冴えた一曲だ。チェスのオーナーだったLeonard Chessが、電話口でCharlesのことを黒人と勘違いしたというエピソードも納得できる。
 「Watch It Sprocket」はファンキーなホーンが楽しいジャンプ・ナンバーであり、「I'd Like To Know」では甘いコーラス・ワークが、「I Ain't Gonna Do It No More」では疾走するビートがそれぞれフィーチャーされている。しかしどの曲をとっても、ニューオリンズR&B特有の明るい空気を感じずにはいられない。