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Modern Jazz Quartet (1956)

 Milt Jacksonの黒人的なブルースフィーリングとJohn Lewisの知的なクラシックの素養がぶつかり合いながら、一つのグループとしての一体感を失わなかったのが、Modern Jazz Quartetの起こした一つ目の奇跡である。さらにドラマーのConnie Kayを迎えてからは、ジャズ・グループとしては不倒記録とも言うべき長命カルテットとして活躍し続けた。これも各々の個性の強さを鑑みれば奇跡的な大業と言える。
 本作はメンバーが流動的だったMilt Jackson Quartet時代から、おなじみのModern Jazz Quartetに移行しつつあった時期の記録である。そのため、一部のトラックではRay BrownやAl Jonesといったメンバーが参加しており、クレジットで混乱しやすく注意が必要だ。
 コンサートでも度々披露されていた「Softly, As In The Morning Sunrise」や「Bluesology」といった曲は既にレパートリーとなって披露されている。前者はもともと78回転盤に収録されたもので、曲の構成はいたってコンパクトな印象となったが、LewisとJacksonによるコントラストはラストコンサートの演奏と比べても遜色はない。戦前から様々な歌手に愛されるポピュラーソング「Between The Devil And The Deep Blue Sea」(George Harrisonが遺作『Brainwashed』でカバーし話題となった)のように軽快なレトロ趣味もうかがえるのも興味深いところだ。
 録音はいずれも50年代の初期に行われたものだが、後の名盤を予感させるMJQならではの個性はすでに随所に現れている。Kenny Clarkeのプレイはハードバップ全盛期の熱気をたたえた存在感のあるドラムが魅力だったが、それが皮肉にもLewisとの折り合いが悪くなる原因の一端となっている。Clarkeは本作が発表される頃には脱退しパリに活動の拠点を移すが、彼が去る直前に残したオリジナルMJQメンバーによるセッションから生まれたアルバムこそ、ジャズ史に燦然と輝く名盤『Django』だ。